表面利回りの計算と修繕費の見積り方|利回り20.78%・回収4.8年の実例で解説
結論:表面利回りは「年間家賃収入 ÷ 総投資額 × 100」で計算し、総投資額には必ず修繕費(リフォーム費)と諸費用を含めます。物件価格だけで計算した利回りは、築古戸建てでは実態と大きくずれます。修繕費をどう見積もるかが利回り計算の精度そのものであり、見積もった修繕費は「家賃に換算していくらか」で上限を決めると、買付価格の判断がぶれません。
表面利回りとは、年間家賃収入を投資額で割った収益性の指標のことです。運営費や空室を考慮しない「表面」の数字ですが、築古戸建て・長屋の仕入れ判断では、まずこの表面利回りで候補をふるいにかけるのが実務的です。ただし分母を「物件価格」にするか「物件価格+諸費用+修繕費」にするかで数字が大きく変わるため、この記事では後者(総投資額ベース)で統一します。
表面利回りの計算式(分母は「総投資額」で統一する)
計算式はシンプルです。
総投資額 = 物件価格 + 諸費用(登記費用・仲介手数料など)+ 修繕費(リフォーム費)
回収年数(年)= 総投資額 ÷ 年間家賃収入
運営者が実際に購入した165万円の長屋(倉庫+事務所に改装)の実測値で計算すると、次のようになります。
| 項目 | 実測金額 |
|---|---|
| 不動産購入 | 1,650,000円 |
| 登記費用(免許税込) | 111,500円 |
| 仲介手数料 | 90,750円 |
| リフォーム費(明細19項目) | 1,958,800円 |
| 総投資額 | 3,811,050円 |
| 家賃(事業用・税込66,000円/月) | 年間792,000円 |
| 表面利回り | 20.78%(792,000÷3,811,050) |
| 回収年数 | 約4.8年 |
もし分母を物件価格の165万円だけにすると利回りは48%に見えてしまいます。築古戸建てでは修繕費が物件価格と同等以上になることが珍しくないため、修繕費を入れない利回りは判断材料になりません。なお仲介手数料90,750円は改正前の通常料率の実額で、2024年7月改正の低廉な空き家等特例(800万円以下は上限税込33万円)では、現行制度のほうが最大24万円ほど多くなる場合があります。明細の全項目は実録記事と実測データ集で公開しています。
修繕費の見積り方(内見で項目を洗い出す)
利回り計算の精度は、修繕費の見積り精度で決まります。手順は次の3つです。
- 内見で修繕項目を洗い出す:傾き・雨漏り跡・汚水管の位置など「直せない欠陥」を先に確認し、直せる項目(クロス・床・建具・塗装など)をリスト化します。手順は内見チェックリストにまとめています。
- 触らない部分を決める:すでに綺麗な部分は触らないのが原則です。「どこを残せるか」で修繕費は大きく変わります。
- 項目ごとに単価を当てる:DIYでやる項目は材料費、外注する項目は見積りや過去の実測値を当てます。上の実録では、シャッター150,000円・電気/設備工事400,000円・大工手間400,000円などが金額の大きい項目でした。壁一枚・床一枚の原価を見積書で把握しておくと、次の物件から精度が上がります。
採寸はレーザー距離計(ペン型)で。数量が出れば見積りは半分終わり
修繕費の見積りは「数量×単価」なので、まず数量が要ります。私はペン型のレーザー距離計を持ち歩いていて、壁紙の必要数量・間取り図起こし・カーテン採寸までその場で済ませます。内見の場で「クロス何m・CF何m」の当たりが出れば、材料費の見積りはほぼ終わりです。
楽天でレーザー距離計を見る Amazonでレーザー距離計を見る修繕費の上限は「家賃換算」で決める(6万円=1,000円換算則)
洗い出した修繕項目を全部やるかどうかは、「その修繕で家賃をいくら上げられるか」から逆算します。物差しが6万円=1,000円換算則です。修繕原価6万円=家賃1,000円アップ相当(1,000円×12ヶ月×5年=6万円・5年回収を内包)と考え、家賃アップにつながらない修繕は削る、という順番で予算を絞り込みます。想定利回りを15%に置く場合は「原価8万円=家賃1,000円」に読み替えます。試算は換算則ツールでできます。
買付ラインは辻本式14.5%ルール(届かなければ値引きか見送り)
総投資額(物件価格+諸費用+修繕費見積り)と想定家賃が揃ったら、最後は買付ラインとの照合です。運営者の実務基準は辻本式14.5%ルール:表面利回り14.5%以上・投資回収7年以内を購入検討ラインとし、理想は17%以上・回収6年切りです。年利15%前後で回れば約5年で投資額が倍になる計算(72の法則の考え方)が、このラインの背景にあります。
計算結果がラインに届かない場合は、①値引き交渉で分母を下げる、②修繕範囲を削って分母を下げる、③想定家賃を見直す、のどれかで届くかを試し、それでも届かなければ見送りが実務的です。利回り逆算シミュレーターを使うと、仕入上限・リノベ上限・出口価格の4モードで逆算できます(結果は一般的な目安であり、投資判断はご自身の責任でお願いします)。
この記事のまとめ(大家の判断ブロック)
- 結論
- 表面利回りは「年間家賃収入÷総投資額」。総投資額に修繕費・諸費用を必ず含める。実測例=総投資381.1万円・家賃6.6万円/月・利回り20.78%・回収4.8年。
- DIYでできる範囲
- 修繕項目の洗い出しと数量採寸(レーザー距離計)、クロス・床・建具・塗装など内装系の原価圧縮。DIY化で分母(総投資額)を下げるほど利回りは上がる。
- 専門家に頼む範囲
- 電気・ガス工事(有資格者のみ)、大工工事・高所作業、再建築可否や税務を含む投資判断の確認(宅建士・税理士等)。
- 費用の目安
- 修繕費は「数量×単価」で項目ごとに積み上げ、上限は6万円=1,000円換算則で家賃から逆算(利回り15%想定なら8万円=1,000円)。金額は物件により異なります。
- 家賃・利回りへの影響
- 買付は辻本式14.5%ルール(表面利回り14.5%以上・回収7年以内)に届くかで線引き。届かなければ値引き・修繕範囲の見直し・見送りの三択。
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よくある質問
- Q. 表面利回りの計算に修繕費は入れるべきですか?
- 入れるべきです。築古戸建てでは修繕費が物件価格と同等以上になることが珍しくなく、物件価格だけで計算した利回りは実態とかけ離れます。「年間家賃収入÷(物件価格+諸費用+修繕費)」で計算すると、物件同士を同じ物差しで比較できます。実測例では物件165万円に対しリフォーム費195.9万円で、総投資381.1万円・利回り20.78%でした。
- Q. 表面利回りは何%あれば買っていいですか?
- 一律の正解はありませんが、運営者は辻本式14.5%ルール(表面利回り14.5%以上・投資回収7年以内、理想は17%・6年切り)を購入検討ラインにしています。表面利回りは運営費や空室を含まないため、ラインに届いても即断せず、修繕費の見積り精度を上げたうえで判断してください。届かない場合は値引き交渉や修繕範囲の見直しで届くかを試し、無理なら見送りが実務的です。