水回りの「洗い」を自分でやる道具一式|外注5〜10万円を圧縮する順番と洗剤の使い分け
結論:「洗い」は資格も専門工事も要らないのに、外注するとワンルームで約5万円、広い家で約10万円かかる費用項目です。時間はかかりますが、専門の道具と溶剤をそろえれば、大家自身でもプロに近い仕上がりまで持っていける作業です。ここを自前化できるかどうかで、退去のたびに出ていく金額が変わります。
ただし「気合いでこする」作業ではありません。汚れの種類に洗剤を合わせ、上から下へ、正しい順番で進める——この2つを外すと、時間だけかかって落ちない、あるいは素材を傷めて余計な補修費が出る、という結果になります。この記事は、退去後の部屋を自分で仕上げたい大家さん向けに、道具の選び方と5ステップの手順、やってはいけない組み合わせをまとめたものです。
まず定義:現場でいう「洗い」=ハウスクリーニング(美装)
「洗い」とは、工事や解体が終わった部屋を、入居者に引き渡せる状態まで清掃で仕上げる工程のことです。見積書では「美装」「クリーニング」「ハウスクリーニング」と書かれることもあります。壁紙や床を張り替える「工事」ではなく、既存の素材から汚れを落として本来の色と艶を出す作業、と考えるとわかりやすいと思います。
築古戸建て・長屋の再生では、この洗いの出来がそのまま内見の第一印象になります。水回りだけは新品同様に見えないと、いくら壁紙を張り替えても「古い家」と判断されがちです。逆に言えば、キッチン・浴室・洗面所・トイレの4カ所を徹底的に洗うだけで、募集の見え方はかなり変わります。
外注するといくら?(洗いの費用目安)
当サイトの運営者が現場で把握している、洗い(ハウスクリーニング)の外注相場は次のとおりです。
| 対象 | 外注した場合の相場 | DIYにした場合 |
|---|---|---|
| ワンルーム | 約5万円 | 洗剤・道具代のみ(数千円〜1万円台が目安)+自分の時間 |
| 広い家(戸建て・長屋など) | 約10万円 | 同上。範囲が広い分、日数がかかる |
参考までに、当サイトの実録第1号(165万円の長屋を倉庫+事務所に再生)では、「解体・ゴミ・美装」でまとめて100,000円という実測明細が残っています(工事費合計1,958,800円の内訳の1つ)。解体・処分と同じ枠に入る、決して小さくない費用です。
金額の意味を当サイトの物差しで見ておきます。6万円=1,000円換算則(修繕原価6万円=家賃1,000円アップ相当・5年回収を内包)で考えると、洗いを自分でやって浮かせた5〜10万円は、家賃1,000円アップ相当の工事1件分前後の予算に振り替えられるということです。洗い自体は家賃を上げる工事ではありませんが、浮いた分を家賃が上がる工事へ回せる、という関係になります。試算は換算則ツールでできます。
また、修繕費は総投資額に乗るため、そのまま利回りに効きます。購入検討ラインを辻本式14.5%ルール(表面利回り14.5%以上・投資回収7年以内)で見ている場合、洗いのような「自分でもできる項目」を外注に出し続けるかどうかは、買える物件の幅にも関わってきます。計算の考え方は表面利回りの計算と修繕費の見積り方にまとめています。
汚れ別・洗剤の使い分け(ここを外すと落ちません)
洗いで一番差が出るのは腕力ではなく、汚れの正体に洗剤の性質を合わせられるかです。基本は「酸性の汚れにはアルカリ性の洗剤」「アルカリ性の汚れには酸性の洗剤」と、反対の性質をぶつける考え方です。
| 汚れ | 主な場所 | 合わせる洗剤の性質 |
|---|---|---|
| 油汚れ・皮脂 | キッチン、換気扇、壁 | アルカリ性(重曹・セスキ・アルカリ性の業務用洗剤) |
| 水垢・湯垢・尿石(白い固着) | 浴室、洗面台、トイレ、蛇口まわり | 酸性(クエン酸・酸性の水垢除去剤) |
| 石けんカス | 浴室、洗面台 | アルカリ性を先に、残った白い固着に酸性 |
| カビ(黒い点) | 浴室のパッキン・目地 | 塩素系(換気を強くして単独使用) |
| 手あか・全体の軽い汚れ | 建具、床、スイッチまわり | 中性(素材を選ばず使いやすい) |
迷ったら、まず中性洗剤で試し、落ちなければ性質の強いものへ段階的に上げるのが安全です。最初から強い薬剤を使うと、落ちる前に素材のほうが傷みます。
洗いの5ステップ(この順番が時短になります)
ステップ1:先に「触らない場所」を決めて養生する
洗い始める前に、すでにきれいな部分・洗剤を当てたくない部分(無垢材、塗装した壁、張り替えたばかりの壁紙、金属の艶がある部分など)を決めて、マスカーやビニールで養生します。全部を等しく洗おうとすると時間がいくらあっても足りません。「ここは触らない」と先に決めるのが、洗いを終わらせるコツです。
ステップ2:乾いたゴミ・ホコリを先に取り切る
いきなり水や洗剤をかけると、ホコリが泥になって作業量が増えます。掃除機・ほうき・から拭きで、粉塵と髪の毛、排水口のゴミを先に撤去します。解体やリフォームの直後は粉塵が多いので、この工程だけで見え方が変わります。
ステップ3:洗剤を塗って「置く」(こするのは後)
汚れに合った洗剤を塗り、製品が指定する時間だけ置いて汚れをゆるめます。こするのはそのあとです。多くの人が、置き時間を取らずにいきなりこすって「落ちない」と判断しています。垂れる場所は、キッチンペーパーやラップで洗剤を密着させると留まります。
ステップ4:上から下へ、奥から手前へ落とす
照明・換気扇・棚の上 → 壁 → 設備(キッチン・浴槽・洗面台・便器)→ 床、の順で進めます。下を先に洗うと、上から落ちてきた汚水でやり直しになります。部屋どうしも同じで、奥の部屋から玄関へ向かって進めると、仕上げた場所を踏み返さずに済みます。
ステップ5:水気を残さず拭き上げる
洗剤成分が残ると白く浮き、水滴が乾くと新しい水垢になります。最後は必ず水で流す・拭き取る→乾いたクロスで水気を取るまで行います。蛇口や鏡は、ここまでやるかどうかで「新品に見えるか」が決まります。仕上がりは内見時の写真にそのまま出ます。
「大工作業以外」は自分でできる。洗いはその代表格です
現場をやってきた実感として、分別・建具調整・塗装・クロス・CF、そして洗い——このあたりは大工作業と違って、道具さえそろえれば自分でできます。洗いは特にそうで、専門の道具と溶剤を使えば素人でもプロ並みの仕上がりに持っていけます。ただし時間はかかります。そこだけは覚悟しておいてください。もう1つ、現場でいつも言っているのは「既に綺麗な部分は触らない」。洗いも同じで、範囲を絞るほど終わります。
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- 研磨剤・金属パッドを艶のある面に当てる:ステンレス、浴槽(FRP・人工大理石)、鏡、光沢のある床は、汚れと一緒に艶が消え、傷が白く残ります。艶のある面はまず中性〜専用洗剤と柔らかいパッドで。研磨は目立たない場所で試してからにしてください。
- 酸性の洗剤を大理石・鉄・アルミに使う:酸性の水垢除去剤は、天然石を溶かし、金属をさびさせることがあります。使ってよい素材が製品に書かれているので、蛇口まわりでも表示を確認してから当ててください。
- 洗剤を「置かずに」こする:時間ばかりかかって落ちず、力任せになって傷が入るパターンです。置き時間を取るのが結果的に一番速い方法です。
高圧洗浄機を使う場面(屋外まわり)と、レンタルという選択肢
室内の洗いに高圧洗浄機は基本的に使いません。使いどころは、外構・土間・ベランダ・外壁の下部・雨樋まわり・ゴミ置き場など、水をかけても問題のない屋外です。築古物件は外まわりの黒ずみで古く見えていることが多いので、ここを流すだけで外観の印象が変わります。
年に数回しか使わない機材は、買わずに借りるという選択肢もあります。当サイトの運営会社(有限会社サンガ)では、高圧洗浄機・攪拌機・レーザー墨出し器・脚立・軽トラックなどの機材レンタルを大阪府内・応相談で行っています(料金は準備中)。詳しくは機材レンタルのページをご覧ください。
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洗いの大半は自分でできますが、次の作業は分解や設備の知識、専用機材が必要になるため、専門業者に依頼してください。無理に手を出すと、清掃費より高い修理費が発生します。
- エアコンの分解洗浄:内部の分解・高圧洗浄は専門業者の領域です。素人が内部に水をかけると、電装部の故障や水漏れの原因になります。
- 排水管の高圧洗浄・詰まりの除去:専用機材が必要で、無理に押し込むと配管を傷めることがあります。
- 浴室のカビが目地の奥まで進んだケース:洗剤で表面が落ちなければ、シーリングの打ち替えという別作業になります(手順はコーキングの打ち方 完全手順を参照)。
- 高所の外壁・屋根まわり:足場が必要な高さの作業は業者へ。高所作業は落下事故のリスクがあります。
- 入居中の部屋の清掃:入居者の生活空間に関わる対応は、管理会社を通してください。
この記事のまとめ(大家の判断ブロック)
- 結論
- 洗い(ハウスクリーニング)は資格も専門工事も不要な一方、外注すると1R約5万円・広い家約10万円かかる。汚れに洗剤を合わせ、上から下へ進めれば大家自身で仕上げられる。ただし時間はかかる。
- DIYでできる範囲
- 室内全般の洗い(キッチン・浴室・洗面所・トイレ・建具・床)、屋外の高圧洗浄、養生と範囲の絞り込み。
- 専門家に頼む範囲
- エアコンの分解洗浄、排水管の高圧洗浄・詰まり除去、足場が要る高所の外壁・屋根、入居中の部屋(管理会社経由)。
- 費用の目安
- 外注=1R約5万円/広い家約10万円。DIY=洗剤・道具代のみ(数千円〜1万円台が目安)。実録第1号では「解体・ゴミ・美装」まとめて100,000円。
- 家賃・利回りへの影響
- 洗いは家賃を上げる工事ではないが、浮いた5〜10万円は6万円=1,000円換算則でいえば家賃1,000円アップ相当の工事1件分前後の予算に振り替えられる。修繕費は総投資額に乗るため、辻本式14.5%ルールで見る利回りにも効く。
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よくある質問
- Q. ハウスクリーニングを自分でやると、いくら浮きますか?
- 当サイト運営者が現場で把握している外注相場は、ワンルームで約5万円、広い家(戸建て・長屋など)で約10万円です。DIYにすると洗剤・道具代(数千円〜1万円台が目安)だけになるため、差額がそのまま浮く計算になります。ただし範囲が広いほど日数がかかるため、募集開始日から逆算して着手時期を決めてください。
- Q. 洗剤は何をそろえればいいですか?
- 最低限は「中性洗剤」「アルカリ性(油汚れ用)」「酸性(水垢用)」「塩素系(カビ用)」の4種類です。汚れの性質と反対の性質をぶつけるのが基本で、油汚れにはアルカリ性、水垢・尿石には酸性を使います。迷ったら中性から試し、落ちなければ段階的に強いものへ上げてください。塩素系と酸性は混ぜても、続けて使ってもいけません。
- Q. こすっても水垢が落ちません。どうすればいいですか?
- 白く固まった水垢はアルカリ性の汚れなので、アルカリ性洗剤では落ちません。酸性の水垢除去剤を塗り、製品が指定する時間だけ置いてからこすってください。垂れる面はキッチンペーパーやラップで密着させると留まります。それでも残る場合は研磨という手段もありますが、艶のある面は傷が白く残るため、目立たない場所で試してから判断してください。
- Q. 洗いはリフォームのどのタイミングでやるのが正解ですか?
- 原則として、粉塵が出る工事(解体・下地・塗装)がすべて終わってから最後に行います。先に洗ってしまうと、あとの工事の粉塵でやり直しになります。順番としては「解体・分別 → 下地・仕上げ工事 → 洗い → 撮影・募集開始」という流れです。全体の段取りは退去後の原状回復を安くする段取りにまとめています。